肺炎球菌ワクチン
肺炎と肺炎球菌
肺炎は決して軽視できない病気です。日本人の死因第5位であり、高齢化が進む日本では、肺炎による死亡者の97.9%が65歳以上というデータからも、その深刻さが伺えます。
肺炎の原因となる細菌は様々ですが、中でも肺炎球菌は最も多く、重症化しやすい菌として知られています。
肺炎球菌と侵襲性肺炎球菌感染症
肺炎球菌は、感染した体の場所によって、症状や経過は異なります。肺炎はもちろんのこと、中耳炎、副鼻腔炎などの原因となることがあり、体の様々な部位に感染することがあります。
特に免疫力が低下している場合は、菌が体の奥深くまで侵入して重症化する侵襲性肺炎球菌感染症を発症することがあります。
具体的には、
- 菌血症(血液中に細菌が侵入している状態)
- 敗血症(感染症により、血圧低下、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全などを生じる状態)
- 髄膜炎(髄膜への感染により発熱、頭痛、意識障害、項部硬直(首を曲げられない)、けいれんなど症状が見られる)
などが挙げられ、命に関わったり後遺症が残ったりするような重症感染症と言えます。
肺炎球菌ワクチンについて
成人用肺炎球菌ワクチンを接種することで、肺炎球菌性肺炎を予防し、侵襲性肺炎球菌感染症の発症リスク・重症化のリスクを減らすことができます。
ワクチン接種が推奨される方
- 65歳以上の高齢者 加齢とともに免疫力が低下し、肺炎のリスクが高まるため、特に推奨されています。
- 基礎疾患をお持ちの方
- 心臓病(心筋梗塞、狭心症など)
- 呼吸器疾患(喘息、COPDなど)
- 糖尿病
- 腎臓病
- 脾臓摘出後の方 など
これらの病気をお持ちの方は、肺炎球菌による肺炎が重症化しやすいため、ワクチン接種が推奨されます。
※肺炎球菌ワクチンは、すべての肺炎を予防するものではありません。
※新型コロナウイルスなど、ウイルス性の肺炎や、肺炎球菌以外の細菌による肺炎には効果がありません。
成人用肺炎球菌ワクチンの定期接種について
65歳を対象とした肺炎球菌ワクチンの定期接種が行われています。
定期接種とは、「予防接種法」という法律に基づき市区町村が実施する予防接種です。
定期接種の対象者
以下の2つに該当する方が定期接種の対象者です。
- 今まで定期接種の対象となる成人用肺炎球菌ワクチンを接種したことがない方
- 65歳の方
※定期接種の機会は65歳の1年間です。
※60~65歳未満の方でも、下記に当てはまる方は定期接種の対象者です。
- `心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害がある方
- ヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある方`
※これまでは65歳で定期接種の機会を逃してしまった方も、70歳以降に「経過措置」として定期接種を受けることができましたが、経過措置は令和5年度(令和6年3月31日)で終了しました。
定期接種の期間が終了した方へ
65歳を超える方でも、成人用肺炎球菌ワクチンの任意接種(費用自己負担)が受けられます。
接種スケジュールなどご不明な点がございましたらお気軽に当院までご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省. 令和4年人口動態調査
- 厚生労働省. 令和3年人口動態調査
- 日本呼吸器学会.成人肺炎診療ガイドライン2017
- 日本内科学会成人予防接種検討ワーキンググループ. 成人予防接種のガイダンス2016年改訂版